【最低と変態で5つのお題を消化してみた】
その手を伸ばして 届かなくて手を伸ばした。
精一杯伸ばした。
けれど、物事には限界と呼ばれるもの、あるいは越えられない壁というものがある。
伸ばす指先がそれにかすれて、わずか、あと僅かであるのに届かない。
もうこれ以上は無理だ。
どうあがいたって届きはしないので…けれどここで諦める事なんて出来ないので。
あぁ、こんな選択などしたくはなかった。
けれどこれしかないのならば致し方ない。
誇りを持て。その手段を選択した勇気というものに。
「ぼんちゃん、そこの踏み台取ってちょうだい」
「あいさー☆」
「さすがに一番上の書棚は届かなかったよ」
「見た目で分かってくださいよぅ!」
「うっさいよ」
その手で触れて 「ちょ、ま…っ!やめ、」
「今更何を言ってるんでぇすか~?これだけ焦らせておいて、それはないですよねぃ?」
「待て、話せば分かる、きっと分かる、とりあえず落ち着…っ 息を吹きかけるな…っ!」
「いーちゃんこそ、そんな大声出していいんでぇすか~?」
「っ…!!」
「誰かがドアを開けちゃったら終わりですよねぃ~??」
「…指一本でも触れてみろ、いくらぼんちゃんでもぶっ飛ばすぞ」
「いーちゃんったら、たったこれだけのことで…もぅっ ほんっとサイテーですねぃ☆」
「や、ちょ、うぅっわ…っ!?」
そして変態牛っ子の手は、綺麗に積まれたトランプ・タワーへ。
その手で掴んで トランプ・タワー(赤毛作)を崩壊させてしまったので、赤毛をえっらい不機嫌にさせてしまったような雌牛だ。
しかし彼女はにこにこと楽しそうに、目の前でふてくされて座っている赤毛へ笑いかける。
ここは謝罪の一発でもかましてみるか。
「いーちゃぁん、私に何か望むことってありませんかねぃ??」
「………巨乳になって」
「じゃあいーちゃんが揉んで大きくしてください☆」
うふふ、と変態牛っ子が笑うと、最低赤毛は躊躇いもなくささやかな胸元へ手を伸ばして、
「つか結局俺が努力するんかい」
「長期的共同作業と言ってくださいよぅ☆」
「いや俺の努力だろう」
「私はいーちゃんの愛に応えるという努力をするのですよぅ☆」
「努力なの?!そこ努力しないとだめなの?!つか俺に愛は無ぇぇっっ」
「じゃあ私の愛で満たしますので溢れた分を還元してくださぁい!」
「うわっ きもちわるっっ」
「ホントにいーちゃんはふっつーに最低ですよねぇい」
その手で振り払って 思わず牛っ子の手を振り払った。
突然の赤毛の行為に、牛っ子はきょとんとしていた。
まさか振り払われるなんて思っていなかったのだろう。珍しく…いや、今までだって本人としてはやましいことなんてない、ただ純粋な好意でもって彼女は手を差し伸べたにすぎないのだから。
理由がなかった。
振り払われる理由がなかった。
理由などなかった。
赤毛のその行為の意味を、牛っ子はしっかりと知っていた。
その手で振り払うことの意味を。
その手で壊して 誰からも手を離されることに怯える彼が、なぜ自分の手を唐突に振り払ったのか。
牛っ子はそれでも笑う。いつものように、にっこりと突き抜けるような真っ直ぐの笑みだ。
そしてもう一度手を伸ばす。
白い手に触れて、掴んで、振り払おうとするなら、振り払えなくすればいい。
とりあえず手を繋げる物だけあればいいので、骨は砕いちゃっていいんじゃないかと彼女は考える。
私を試すあなたの理解が先か、
私に壊されるあなたの限界が先か。
いやいやいや、別に壊したいわけじゃないのですよ。
ただね
「なにせいーちゃんは壊れやすいもので」
だったら少しは丁寧に扱え、と聞こえたような気がした。
空耳にしておく。
(了)
1、2、2な感じで。
ひねりもなくスタンダードにしかならなかったです…orz
最後のはちゃんとダーク・シリアスになってるかな??
↓↓お題配布元↓↓
URL:http://endlessend.yomibitoshirazu.com/
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