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<はるのなかではおしずかに>

はいいろのいんぼう

るらんどりーめらんこりっく

のいずのまじったひるさがり

なぜひかりをわすれたのか

かなしいうそをつきましょう

でんわのむこう、ひかるかげ

はなむけへのたむけ

おしらせ:とうとうきました

しゃんぐりらのゆめのゆめ

ずるいよきれいすぎて

かいだんかけあがるかぜ

にわかあめのあと



お題はいつものこちらから
 http://www1.odn.ne.jp/~cad87370/na/index.html


 「灯!」

 ハッと目を覚ますと、暗い天井が見えた。
 そこは先ほどまでいた白い光の中でも、その前にいた巫祝王の奥室でもなかった。市岐本家の一室…?
 天井付近に青い蝶々が見えた…ような気がした。

 きょろきょろとあたりを見回すが、誰もいない和室にはやはり誰もいない。
 さっき呼んだ声は… 「…!」
 もう一度、今度は遠くから僕を呼ぶ声が聞こえて、僕は急いで立ち上がって走り出した。
 玄関の方から、その声は僕の名前を呼びながら奥へと近づいてくる。
 僕の名前を呼ぶ。

 「春兎!」

 曲がり角の向こうに見えた彼に、僕は叫んだ。
 春兎が振り返り、僕の方へ駆けてくる。一歩手前で立ち止りかけた彼のその距離を、僕は踏み越えてしがみついた。
 春兎の驚いた空気が頭上で動いたが、僕は構わない。

 「だいじょうぶ?怪我はしてない?」
 「……大丈夫だ、なんともない」

 ぎゅう、としがみついた僕は一度彼を離し、かがんで目線を合わせる相手に頷いた。

 「春兎、何故来た?君は家の方にいるのだと思っていたよ」
 「家にというか、駅にいたんだけど…。巫祝王の気配が消えたから、心配になってきちゃったんだ」
 「心配?」

 巫祝王の気配が消えたことが分かっているのならば、僕が勝利したということではないのだろうか。僕の身を心配する意味が分からなくて、僕は首を傾げた。
 すると、春兎は小さく苦笑して、

 「一緒に消えてしまうのではないかと思ったんだよ」

 と言う。その春兎の言葉に僕はなんとも答えられなかった。

 ノノトがあのとき、僕を解放してくれなければ、僕はやはり"消えて"しまったのだろう。
 ノノトは。
 僕の未来を助け、過去の記憶を天井に連れて行ってくれた。
 瞼の裏に、青い蝶々の光が空へ昇っていく光景が、まだ鮮明に映し出される。

 「大丈夫だ、僕はちゃんとここにいるよ」

 僕は残された。
 市岐の理の外にいる僕を、そのまま外に置いてくれた。

 「そうだね。よかった」

 ホッと、安心したように笑う春兎に、僕はにか、と笑った。
 ぱちくり、と瞬きをして僕を見る春兎に、「そうだ!」と声を上げた。

 「君がここにいるってことは、もしかして紗希も来ているのか?!」
 「あ、あぁ、うん。一応紗希さんにも連絡をしたし、僕が来た時には玄関が開いていたから、先に来ているのかもしれない」
 「ということは、奥室に行ってるかもしれないな。
 春兎、黒傘を買って来てくれないか、それから智詩と山本を呼んできてくれ」
 「え、傘…」
 「あぁ」

 その言葉に期待を込めた目をした春兎に、僕はしっかりと頷いた。

 「すぐ君らの前に突き出してやる」


 僕は奥室に走った。途中、リュックが軽いことに気付いて、中にいるはずのエウブレウスがいないのだと分かった。
 きっと彼も先に奥室に向かっているのだろう。
 開いていた奥室に、先の背中があった。

 「………」

 僕は足を止めた。
 しゃがみ込んだ彼女はしっかりと、上体を起こしていた幾寅を抱きしめて、たぶん、泣いていた。
 紗希の小さな声が聞こえるけれど、何を言っているのか、僕の耳までは届かなかった。
 紗希のこの声は、僕は知ることが出来ない。僕は幾寅ではないから。
 この言葉くらいは、彼にくれてやろう。
 人のありようを外れ、これから長い時間を旅する彼にむける、僕からの手向けだ。

 紗希の声が聞こえなくなり、こちらを向いている幾寅が何か声を掛けた。
 そして、ふと僕の方を見上げ、そこで初めて気付いたのか、紗希の背中を撫でていた右手を軽く挙げた。
 僕は眉を上げる。
 ……だが、

 「こらっ!僕の紗希に何をしている!」

 そんなに長い時間の抱擁を僕は許さないぞ。




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